京都府理学療法士会ニュース NOW No.291
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第2回THE KYOTO PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION NEWS | NOW | vol.29103【図2】 下垂位外旋上からみた図肩関節疾患には、拘縮肩、腱板断裂、脱臼、骨折など多くの疾患が挙げられます。全てを評価できることに超したことはありませんが、例えば初回のリハビリテーション時にどの評価を優先したら良いでしょうか?臨床的にまずここを抑えておいた方が良いポイントを以下に記載します。 来院される患者さんのほとんどが疼痛を抱えておられます。まず、問診を大事にします。いつから、きっかけ、現在の症状、特に安静時痛、夜間痛、そして運動時痛(どの動作で再現されるかも含めて)などは必ず聴取、確認します。その上で、こわばった、いわゆるスパズムの生じた肩関節周囲筋を確認します(図1)。僧帽筋、肩甲挙筋、大胸筋、小胸筋、前鋸筋にはほとんどの患者さんにおいて圧痛所見がみられます。圧痛のある筋のリラクセーションを得ると患肢の重さを感じることができます。この状態で肩甲上腕関節の可動域評価に移ります。なお、スパズムが生じた状態では真の関節可動域を測定することが困難ですので、まずはリラクセーションを得ることが重要です。【図4】 水平屈曲上からみた図 SICK-Scapulaという概念をご存知でしょうか。肩関節疾患にはほとんどSICK-scapulaを伴うとされています。 Scapular malposition(肩甲骨の位置異常) Inferior medial border prominence(肩甲骨下方内側縁の突出) Coracoid pain and malposition(烏口突起の疼痛と位置異常) dysKinesis of scapular movement(肩甲骨異常運動)肩甲骨を前後から観察・触診し、下垂位での肩甲骨位置異常および動作時の肩甲骨運動異常の有無を評価します。評価の際には、左右差を診ていくことが重要です。【図3】 肩甲骨面挙上前方からみた図 疼痛と密接に関連します。上述のように、肩甲骨周囲筋のリラクセーションが得られて初めて肩甲上腕関節のROMを確認することができます。以下、初回のリハビリでどこに制限があるかの見当をつけるために、最低限確認すべき肢位を記載します。1)下垂位外旋角度確認 前回の号で示しましたが、上肢挙上には上腕骨の外旋が求められます。外旋角度がどの程度あるのか、下垂位にて確認します。制限されている場合、前方組織;前方関節包、肩甲下筋の硬さを疑います。2)肩甲骨面挙上にて大結節が肩峰下を通過するかどうかを確認 肩甲骨面においてpassiveに挙上し確認します。通過しない場合、下方組織;下方関節包、肩甲下筋下部、小円筋の硬さを疑います。3)水平屈曲および屈曲90°での内旋確認 制限されている場合、後方組織;後方関節包、棘下筋、小円筋の硬さを疑います。左から結節間溝、腱板疎部、烏口突起、小胸筋、大胸筋鎖骨部上から肩甲骨上角(肩甲挙筋付着部)、棘上筋、棘下筋市橋則明「身体運動学」㈱メジカルビュー社.2017宮坂 淳介京都大学医学部附属病院リハビリテーション部【図1】 疼痛の有無を確認すべき箇所【図5】 SICK-Scapula肩甲下筋上から小円筋、前鋸筋SICK肩甲骨の内旋、下方回旋、前傾が生じる。疼痛の評価肩甲骨運動の見方肩甲上腕関節の可動域肩関節疾患に対する評価・治療のヒント肩関節評価のポイント

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